このたびは、全国人権擁護委員連合会(全連)のホームページをご覧いただきましてありがとうございます。
全連は、全国1万4千人の人権擁護委員の全国組織で、人権擁護委員法に基づいて組織されています。人権擁護委員は、自治体の首長が推薦し、法務大臣が委嘱する民間ボランテイアの委員です。人権擁護委員法に基づいて、人権啓発、人権相談、人権侵犯事件の調査等の活動に従事しています。
人権擁護委員制度は、政府を一方の車輪、民間人を他方の車輪として、互いにその長所を生かし、短所を補う両輪をつくるという着想により、昭和23年7月17日に公布・施行された人権擁護委員令によって誕生しました。当時の人権擁護委員は、ほとんどが弁護士でした。昭和24年6月1日、人権擁護委員令の廃止とともに人権擁護委員法(昭和24年5月31日法律第139号)が施行され、人権擁護委員の数を増やし、恒久的な制度とするため、機構その他の充実、整備が図られました。これにより、人権擁護委員は、独立して人権侵犯事件の調査、救済のため適切な処置がとれるようになりました。人権擁護委員協議会及び同連合会が設けられ、その任務が明確にされるなど、現在の人権擁護委員制度が確立しました。
人権擁護委員制度は、外国の制度を参考にして作られたものではなく、アメリカはもちろん、世界のいずれの国にも存在しない、世界に比類のない独特の制度としてスタートしました。農家、教員、元公務員、弁護士、司法書士、医師、看護師、福祉関係者、会社員、マスコミ、主婦、NPO関係者、等々。文字通り、様々な分野の人たちが人権擁護委員として活動しています。私は元教員です。
子どもの人権に関わる私たちの活動のひとつに、「子どもの人権SOSミニレター」という取組みがあります。全国の小学校・中学校の児童・生徒に便箋兼封筒のSOSミニレターを配布し、児童・生徒がそこに相談したいことを書いて、裏面の封筒部分を切り取り、便せん部分を入れてポストに投函すると、人権擁護委員が、秘密厳守の上で、お返事の手紙をお返しするというものです。幸い、子どもたちから、「SOSミニレターは私たちの命のお守り」ですとのお便りをいただいています。オンラインでの相談も全国で開始しています。
21世紀に入り、人権問題はますます複雑化・多様化しています。インターネットやSNS等の普及により、手軽に情報を収集・発信できるようになりました。その一方で、プライバシーの侵害、誹謗中傷、デマの配信・拡散、個人情報の流出などの人権侵害が深刻な問題となっています。被害者や被害企業の救済がスムーズに進むように、プロバイダ責任制限法が令和3年に改正され、令和4年10月1日に施行されました。インタ ーネット上の誹謗中傷対策で、侮辱罪を厳罰化し、現行の懲役や罰金刑の対象とする改正刑法も令和4年6月13日、国会で可決、成立しました。
法務省の人権擁護機関が受けた、インターネットに関する人権相談の件数は、平成31年1月から令和3年12月までの3年間に2万件を超えました。インターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件の処理件数も、5382件に上っています。違法性があると判断されて、プロバイダ等に対する削除の「要請」がなされた件数は、1237件に及んでいます。
人権侵害の防止および被害救済に対する国民、市民の期待はますます高まっています。人権啓発についても、調査救済との一層の連携を図り、いわば「人権侵害抑止」型の啓発が求められるようになっています。人権救済においても、新たなタイプの、いわば理解促進型の、なによりも当事者の目線に立った人権救済を図ることが求められています。私たち、人権擁護委員及び委員組織体は、法務省の人権擁護機関の一翼を担うものとして、この期待に応えるべく、人権擁護委員活動及び委員組織体活動の充実に日々、努めています。
人権擁護委員は非公務員で、その仕事も無給です。しかし、私たちは委員の仕事に誇りを持っています。1963年、第3回国連総会で採択された「世界人権宣言」は、その前文で、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので、(中略)すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の規準として、この世界人権宣言を公布する。」と謳っています。
私たちは、そんな素晴らしい活動に参加できることをとてもうれしく思っています。
人権擁護の活動を通じて、共生社会の実現に向けて、次世代の人たちとバトンのタッチすることができればと願っています。皆様方のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
全国人権擁護委員連合会会長
内田 博文